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愛は地球を救わない.原14-3 [恋愛小話]

「さっき私は自分のことを、マリア様になぞらえてみたわよね。あの子たちが人口の増加を抑制して人類を滅亡から救ってみせたなら、あの子たちを産んだ私はマリア様みたいなものだと言って。でも私は、決してマリア様なんかじゃない。この世の中や人々を救うために現われるという、救世主の産みの親なんかじゃないんだわ。私は、かなんなの。選びぬかれた人にだけ、たどり着くことを約束された希望の大地。決して絶えることなく乳と蜜が流れる、この地上の楽園。それこそが私に他ならないのよ」

「旧約聖書に書かれたユダヤの伝説に出てくる、カナンの地だね。長く苦しい旅路の果てに彼らが、ようやく築きあげたという自分たちの国だ。すなわち私にとっては、かなんこそが最後にたどり着くべき相手だったというわけなんだな」

「そして同時に私と先生は、この世界におけるアダムとイヴになるんだわ。他の人間が一人もいないエデンの園で、汚れを知らずに暮らしていたというアダムとイヴの二人にね。この部屋が私と先生の二人にとって新しいカナンの地、そして同時に新しいエデンの園になるのよ。あの子たちを外へ解き放ったら確かに、この世界では人類が滅亡してしまうかもしれない。だけど、それでも構わないの。ここで先生と私の二人が生き残り、そして愛しあっていさえしたならば。私たちが愛しあって子供を産めば、人類は決して滅んでしまわずに済むんですもの。この地球いっぱいに私たちの子供が増えて満ちあふれ、新たな世界を創りだしていくことでしょうから。産めよ増やせよ地に満ちよって、聖書にも書かれているんだし」

「かなんと二人で、ともに手を取りあって生きていきたい。かなんさえ私と一緒にいてくれるなら、他の人間なんか一人もいなくて構わない。いや、かなんと二人きりになるためには、むしろ他の人間なんか一人もいなくなってしまってくれればいい。この私の心のどこか片隅に、そんな気持ちが隠されていたことは確かだな。そんな私の身勝手な我がままこそが、こんな事態を巻き起こしてしまったのかも知れないね。かなんと私の二人だけを残して、他の人類が全て滅んでしまうかも知れないだなんていうような事態を」

「それは別に、なにも先生だけに限った話ではないんじゃないかしら。愛する人と自分の二人きりだけで、この地球の上に残されたいと願うのは。そういう気持ちって、おそらく大勢の人たちが分けもっているはずのものだと思うわよ。そんなことを口に出して言ってみせる人は少ないせいで、それと誰もが気づかずにいるみたいだけれど」

「そう言えば昔、そんな感じの歌があったっけ。それに自分たち二人だけしか人間がいなくなってしまえば、相手が浮気をするのでないかという心配もせずに済むものな。女の人には自分でない他の相手に浮気をしてほしくないって、男は強く願う場合が多いはずだし。だからといって自分の側が他の女の人に浮気をするのは、自分で自分に許してしまいがちなんだけどね。それが男の身勝手というか、ずるいところでもあるのだろうけど」

「でも先生は決して、私でない他の女の人に浮気ができないはずですよ。あの子たちが世界中に満ちあふれたら、先生は他の女の人と何をすることなんかできなくなりますからね。すなわち先生は、この私だけしか愛することができないの。それは先生が、自分自身で選びとったことなんだわ。あの子たちを生まれさせ、他の女の人と何をするという可能性を先生みづからの手で閉ざしてしまうことによって」

「そりゃあ私は、かなんのことしか愛したいと思っていないもの。かなんでない他の女の人を抱くことなんて、少しも望んでなんかいやしないんだ。だから私は、そのことを少しも惜しんだり悔やんだりするつもりはないよ。この先もはや私が決して、かなんでない他の女の人を愛することができなくなってしまうのだとしてもね。かなんさえ一緒にいてくれるなら私は、それだけでもう充分なんだから」

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