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「22才、生き方を探す旅」解説 [19才と22才の恋話]

(「22才、生き方を探す旅」は当初、当塾に第16章までを連載する予定でした。
 その際に掲載する予定だった「解説」を、以下に掲げておきます。
 なお「主人公がミサトの家の斜め向かいに引っ越した時」の話は当塾では、下記の2つの頁に書かれています。
  1. ツグミへの手紙.37
  2. ツグミへの手紙.39

 この「22才、生き方を探す旅」という作品では、主人公が大学を卒業した年の大晦日までの話が描かれています。
 しかし「幸せになれる恋愛ノウハウ塾」としては、その年の9月に主人公がミサトの家の斜め向かいに引っ越した時までの話が大切だと言えるのでしょう。
 ですので当塾では、その時の様子を描いた第16章までを掲載させていただきました。

 主人公とヒロインが一つ屋根の下か、あるいは隣同士などに住んでいる――そういう設定のラヴコメは今まで、実にたくさん書かれてきました。そのような状況は大勢の読者にとって、とても大きな憧れの対象だからこそでしょう。
 そして私は22才にして、そんな「憧れの状況」を実際に体験してしまったのです。そうやって考えてみると私は、大勢の人たちからうらやましがられてしまいそうなほど幸せな奴だったと言えそうですね。

 しかも22才の年の9月に私が引っ越した部屋は、ただ単にヒロインことミサトの家の斜め前だっただけではありません。それは私やミサトがかよっていた高校からも、歩いて10分ほどの近さにあったのです。
 そのため高校を卒業した後輩たちや現役生が、しばしば私の部屋を訪れてきたりもしました。その部屋に私が住んでいた年月の間に、その部屋や私の卒業した高校、あるいはその両者の中間にあった公園などを舞台として、さまざまなドラマがくりひろげられる結果ともなりました。そのうちの一部は、この「幸せになれる恋愛ノウハウ塾」に掲載した「10年ごしのプロポーズ」や「究極の愛を掴んだ31才」でも描かれているとおりです。

 この「22才、生き方を探す旅」にはヒロアキやアツシなど、「14才の恋と、サヨナラ」にも登場していた人物たちが出てきます。そして「10年ごしのプロポーズ」は「22才、生き方を探す旅」で主人公が暮らしはじめた町が一つの舞台となって、「22才」にも登場していたミサトやコウジたちが出てきます(コウジは名前が出てくるだけですが)。さらに「究極の愛を掴んだ31才」では、「10年ごし」にも登場していたナツヨやトシオたちが出てきます。

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22才の頃の愛の詩.8 [19才と22才の恋話]

 私は二十二歳だった年の九月から、東京都杉並区の荻窪で暮らしはじめました。好きな女性の斜め向かいの家に引っ越したのです。
 この時のことは拙作『22才、生き方を探す旅』に詳しく書かれています。
 しかし『22才、生き方を探す旅』の九月の場面は、当塾には掲載されていません。この時の引っ越しのことは当塾では、代わりに下記の頁で読むことができます。
  1. ツグミへの手紙.37
  2. ツグミへの手紙.39

 そして二十三歳だった年の六月二十五日に私は、この荻窪を題材にした曲を作りました。
 その歌詞は、次のようなものだったのです。


    OGIKUBO SYNDROME

誰もが誰かをまちぼうけしているこの街  ひとりきりの夜はくらい
こころのどこかで無理してなぐさめあってる  いつわりの愛もつらい
ただの立ちん坊  どこへいくあてもない
ただの立ちん坊  ぬくもりをもとめてさまようピエロ
汗にうもれずにやりすごしていけるほど  おだやかなくらしなんかじゃない
あいそ笑いをせずに生きていけるほど  なごやかなところなんかじゃない
あらぶる胸の想いだけで  燃えたぎる若い血潮だけで
世のなかをかえてゆけるほど甘くはないTokyo city, I know Ogikubo town
You may know Tokyo city, I know Ogikubo town

この想いがいま  世界中になりひびけば
ボクたちの願いがいま  世界中にとどいていけば

世のなかがこころをひきさいてくから  ボクたちの明日はくらい
色褪せかけてる夢だけ大事にかかえて  生きていくのもまたつらい
ただの立ちん坊  おちつける場所もない
ただの立ちん坊  やすらぎをもとめてさまようピエロ
汗にうもれずにやりすごしていけるほど  おだやかなくらしなんかありえない
あいそ笑いをせずに生きていけるほど  なごやかなところなんかありえない
大好きなこの街のたそがれを  君とふたりで歩いていく
ひとりひとりが胸に秘めてる  愛をひとつによせあつめて
世のなかにたちむかっていく他に道はないTokyo city, I know Ogikubo town
You may know Tokyo city, I know Ogikubo town

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愛のための手術.2 [19才と22才の恋話]

 そんな一大決心をして、その次に私が愛ちゃんとデートをした日のことです。
 いつものように二人で一緒に食事をしたり映画を観たりした後、私は愛ちゃんのことを彼女の家の近くまで送っていきました。
 そして夜であたりに人の姿がない場所で私は、どきどきする気持ちに襲われながらも、思いきって彼女に頼んでみたのです。
「こんな僕だけど、今後も愛ちゃんとおつきあいさせてもらいたいと思っているんです。もしもよかったら、これからも会ってもらえますか」って。
 すると愛ちゃんは「うん」と言いながら、小さくうなづいてくれたのです。
 思わず私は心の中で、「やったあ、ばんざーい」と叫んでしまいましたよ。

 愛ちゃんと彼女の家の前で別れてからも私は、すっかり気持ちが舞い上がってしまっていました。
 なにしろ愛ちゃんは、今後も私とおつきあいしてくれると言ってくれたのです。
 すなわち私と愛ちゃんとの関係は今や、はっきり「恋人」だと言っていい状態になったのだと考えられるでしょう。
 これまではデートを重ねていても、自分たち二人の関係を「恋愛」だとか「恋人」などと言うことに対して私は少し気後れがしてしまっていたのですけれど。

 ついに私にも、愛ちゃんのような可愛らしい「恋人」ができたのです。したがって近く私と愛ちゃんは、手を握ったりキスをしたりもすることになるのでしょう。私が彼女の肩を優しく抱いたりなんか、しちゃったりもするのかもしれません。
 そしていつの日か、二人で一つのWベッドに寝たりする日も来るのでしょうか。

 もちろん決して、一つのベッドで一緒に寝るというだけで済むはずはありません。二人で同じ一つのベッドで、セックスなんかもしちゃったりなんかするわけです。
 あの奥ゆかしくて可愛らしくて、それでいてとても女の人らしい体つきをしている愛ちゃんと、セックスなんかもしちゃえるだなんて――そんなふうに考えてみただけでも私には、とてもその日が待ち遠しく感じられてしまうのでした。

 あの奥ゆかしい、愛ちゃんのことです。おそらくその時、とても恥ずかしそうで控えめな顔つきや態度を見せることでしょう。
 そんな愛ちゃんの気持ちを私が、しっかりと温かく包みこんであげるのです。そして「愛ちゃんの肌や体は、きれいだよ。何も恥ずかしがったりすることなんか、ないんだよ」って、優しくささやいてあげるのです。

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愛のための手術.1 [19才と22才の恋話]

 これは私が、まだ大学生だった頃の話です。

 私は当時、とある女性とおつきあいさせてもらっていました。
 二人で一緒に外食をしたり、映画を観に行ったりするデートを重ねていたのです。
 彼女のことを、ここでは仮に愛ちゃんという名前で呼ばせていただくことにしましょう。
 これは彼女の本名を元に、かなりひねって考え出した仮名なのですが。

 ある日、私が愛ちゃんに頼まれて、彼女の買い物に付き添ったことがありました。
 彼女の知り合いが結婚するので、お祝いに贈る品を買うのにつきあってほしいと言われたのです。
 その知り合いに新婚生活で使ってもらうため「Wベッド用の枕を買って贈ろうと思うの」と愛ちゃんは私に言いました。
 そこで二人で何軒か寝具の店を回って、どの枕を買うか見つくろったのです。

「今度、知り合いが結婚するの」だなんて話を聞かされると、どうしても自分の結婚のことを考えてしまいます。
 愛ちゃんと二人でWベッド用の枕をいくつも見てまわっていると、ついつい自分と彼女が二人でWベッドに寝ている光景を思い浮かべてしまいます。
「もしかして愛ちゃんは、それを狙っているのかな。私と二人で知り合いの結婚の話をしたりWベッド用の枕を見て回ることで、私が愛ちゃんとの結婚を意識するようにと望んでいるのだろうか」――ついつい私は、そんなふうに勘ぐってしまったりもしました。

 なにしろ愛ちゃんは、とても奥ゆかしい気だての女の子です。
 もう何度も私とデートを重ねているのに、一度も結婚のことをほのめかしたりしたことはありません。
 それどころか私のことを「好きだ」とか「愛している」などと、はっきりと口にしたことも一度もなかったのです。
 おそらくとても恥ずかしがり屋で控えめなせいで「こんな自分なんかが、本当に好きになってもらえるはずがない」と思って、腰が引けてしまっていたのでしょう。
 私としては愛ちゃんの、そういう謙虚なところが好ましく思えていたのですけれど。

 しかも愛ちゃんは奥ゆかしいので、自分の側から私に連絡をしてくることもありません。
 いつも私の側から電話して、「次は何日に会おう」などと約束をとりつけるのです。

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