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人気者に好かれた私.1-2 [17才の恋話]

 私の名前は、忍野八海。
 下の名前は決して「はっかい」ではなく、「はつみ」と読んでね。
「はっかい」と読むと「おしのはっかい」になっちゃって、富士山の麓の忍野地域にある八つの小さな沼の「忍野八海」のことになっちゃうから。
 おまけに「はっかい」だと、なんだかまるで『西遊記』に出てくる豚の猪八戒みたいでもあるし。

 もちろん「八海」と書いて「はつみ」と読む私の名前は、私の親が富士山の忍野八海にちなんで付けてくれたものなのだけど。
 その忍野八海は私も子供の頃に、親に連れて行ってもらって見たんだけどさ。
 決して大きくはないのに水が澄んでいて、とても深いところまで覗きこむことのできる沼なんかもあるのよね。
 なんだか沼のほとりにしゃがみこんで見つめていると、あの水の奥深くまで潜っていってみたいなって気になっちゃったっけ。

 でもって私の名前も親が、そんな忍野八海の沼を思って付けてくれたんだって。
 決して大きな存在にはならなくてもいいから、心が奥深くまできれいに澄んだ人でいてほしいという願いを込めて。

 そんな私の親の思いに対しては、私も「いい名前を付けてくれたな」って感謝しているんだけどさあ。
 だけどなんだか「忍野八海の沼と同じで、決して大きな存在にはならなくてもいい」っていう部分だけが見事に実現しちゃったみたいで。
 私ったら高校生になったというのに、まだすごく背も低いし体つきも子供っぽいままなのよね。
 同じ高校一年生でもあの浅木さんみたいに、とっても大人っぽい体つきをしている人もいるっていうのによ。

 はたして私も近いうち、あの浅木さんのように大人びた体になれたりするのかなあ。
 だけど自分の子供っぽい体つきを見るたび「そんなの、とうてい無理そうだ」としか思えなくって。
 だから浅木さんのような人を見ていると、とても羨ましく思えると同時に自分のことが情けなく感じられてきて気持ちが落ちこんじゃうのよね。

 でもって私が、そんな複雑な思いで浅木さんのことを見つめていたらさ。
 その浅木さんの一つ後ろ、つまり私の一つ前の席に座っていた女の子が私に話しかけてきてくれたの。
 それが海女かもめさん、だったわけ。
 この日は男子と女子がそれぞれ、苗字の五十音順に座っていたわけだから。
 五十音順で浅木さんの次が海女かもめさんで、その次が「忍野」の私だったってわけね。

 この時にかもめさんが最初、なんと言って声をかけてきてくれたのだったかはもう覚えていないんだけど。
 とにかく私はいつもの癖で、つい「はい」って返事をしちゃったらしいんだな。
 そしたらそれがかもめさんには、すごく受けたみたいで。
「同級生になった者から声をかけられ、わざわざ『はい』だなんて丁寧な返事のしかたをするとはねえ」って言って、とても面白がってもらえて。
 おそらく「この忍野っていう子は、決して悪い子ではないみたいだな」って思えてもらえたんじゃないのかな。

 それからかもめさんがいろいろと私に話しかけてきてくれて、楽しくおしゃべりすることができたの。
 だから私も「ああ、よかった。どうやらこの海女さんという人は、私のお友だちになってくれそうだ」って思えて。
 はじめての高校で少し不安だったし緊張もしちゃっていたのが、ちょっとだけほっとできたわけ。
 本当に、かもめさんには感謝しなくっちゃ。

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