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中学での人気者の一例.2 [14才の恋話]

 たとえば冬で風邪を引いてて、どうしても授業中とかに鼻水が出てきちゃったりすることがあるじゃない。だけど普通は恥ずかしいから、なるべく目立たないように小さな音で鼻をかもうとするでしょう。ところが日向君ったら、そんなことなどちっとも気にしないらしくって。授業中だろうとなんだろうとかまわず、自分の部屋に一人でいる時だって立てないような大きな音で鼻をかむのよ。
 でもってその音が、あまりにも大きくてびっくりするほどなものだからさ。日向君が鼻をかむたび、つい皆がどっと笑い出してしまうのよね。

 いつだったか男の子のうちの誰かが、日向君に訊いていたことがあったっけ。「おい、日向。お前はまたいったいどうして、わざわざそんなにも大きな音を立てて鼻をかむんだ」と。
 その時に日向君は、こう答えたの。「だって鼻をかんでも鼻水が鼻の穴の中に残っていたら、気持ち悪いじゃないか。だけど勢いよく鼻をかめばかむほど、鼻水が完全に出ちゃってくれる可能性が高くなるだろう」って。

 確かに理には、かなっているみたいよね。どうしても私たちは恥ずかしさが先に立っちゃって、あんなに大きな音を出すことができないけどさ。あれだけ勢いよく鼻をかみ鼻水が完全に出きっちゃってくれたら、さぞかしすっきりして気持ちがいいんだろうな。日向君が鼻をかむ音を聞いた時の私たちの心の中には、そんな思いもまじっているみたい。でもってその気持ちよさに対する羨ましさっていうのか、憧れのような思いもあって、つい笑いがこぼれてきちゃうんじゃないのかと思うの。

 そういえば日向君って授業中でもかまわず、おならをしていた頃もあったし。それもまた、いかにも気持ちよさそうに大きな音でさ。でもってその時も皆、つい大爆笑してしまうのよね。
「どうして授業中なのに、おならをするんだ」と訊かれた時も日向君、「だって出ちゃうんだから、しかたないじゃないか、我慢してたら体に悪そうだし」と答えてたっけ。
 だけどさすがにおならの方は皆に臭いと文句を言われて、やめたみたいだけど。私としては何だかほっとしたような、それでいてちょっとだけ淋しいような、おかしな気分。

 それから学校の行事の中には運動会とか合唱祭っていうように、クラスが対抗して競いあうものがあるでしょう。そういう時には日向君って、とても一生懸命でさ。自分の組が少しでも勝ったり負けたりするたび、すごく開けっぴろげに喜んだり悔しがったりするのよね。とりわけ二年生だった年の運動会で私たちの組が最後のリレーで逆転をはたし、僅差で総合優勝した時はすごかったな。日向君ったら本当に文字どおり、何度も飛び上がって喜んじゃって。

 そんなひたむきさも私たちの間で、日向君の人気が高かった原因の一つになってたみたい。「ああ、日向君って本当に私たちのクラスのことを愛しているんだな」って思えたからなのでしょうね。日向君が私たちの気持ちを代弁してくれているように感じられたのも、なんだかちょっと嬉しく思えたし。

 とにかく日向君っていつでも、やることが開けっぴろげだったの。何をしたいのかだとか何を思っているのかだとかが、まわりの私たちにもはっきりわかる感じで。
 でもって動作の一つ一つが、何だかとても大げさに思えたのよね。

 たとえば日向君は私たちの組で、ホームルームの議長を務めていたんだけどさ。ホームルームの時なんて皆は勝手なおしゃべりをしていて、誰も議長の言うことなんか聞いていなかったりするでしょう。すると日向君は皆のことを静かにさせようとして、出席簿で教壇の机の上を叩くの。
 出席簿って表紙は固い紙でできているから、あれで机の上を叩くと大きな音がするのよね。
 あまりにも大きな音がするので皆、おしゃべりをやめて静かにはなるんだけどさ。その音の大きさがおかしくて、ついまたくすくすと笑い出しちゃうのよ。

 しかもそうやって日向君が、しょっちゅう出席簿で教壇の机を叩くせいでさ。私たちの組の出席簿は、すぐに表紙がくたくたになっちゃうのよね。職員室の棚にいろいろなクラスの出席簿が並べられているところを見ると、うちのクラスの出席簿だけボロボロになっちゃっていて。それを目にするたび恥ずかしかったりおかしかったりで、またつい頬がゆるんじゃったりするんだ。

 いつも出席簿で机を叩いていると、表紙がボロボロになっちゃうんじゃないか――おそらく日向君って、そういうふうに先のことまで気を回したりはしないのでしょうね。でもって皆がうるさい時は、ついつい皆を静かにさせることにだけ気が向いちゃうんじゃないのかな。そういう意味では一本気っていうのか、ちょっと単純すぎて子供っぽいところもあったんだと思うの。一本気だからわかりやすくって、それがまた彼の人気の一因になっていた面もあったのでしょうけど。
(「至福の恋人を探して」より)

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至福の恋人を探して  卑猥でない性愛物語

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