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人妻に性を学び恋人に適用 [恋愛小説などから学ぶ]

コレット『青い麦』河野万里子・訳 光文社古典新訳文庫

 思春期の息子さんとお母さんとがセックスをすると、いいのではないでしょうか。
 息子さんの側ではセックスのしかたや、女の人の体のしくみを学ぶことができます。
 セックスに興味があって悶々としてしまうのを防ぐことができ、勉強などの「本来、やるべきこと」に集中できるようになります。
 そしてお母さんの側では息子さんと肌を触れあわせることができ、幸せに感じられるでしょう。
 ――当塾の「母子性交のご提案」では、そうご提案させていただいております。

 そう言えば思春期くらいの若者が人妻から性の手ほどきを受ける話は、いくつか欧米で書かれているっけ。
 ――そう私は思ったのですが、その手の作品をいくつも思い出すことはできずにいたのです。
 この手のことは、なかなか調べるのが難しいですし。

 でも光文社古典新訳文庫でコレット Coletteの『青い麦』を読んでいた時のことです。
 同書の「解説」で鹿島茂さんが、次のように書いているのを見つけたのです。

ブルジョワ階級以上の未婚の若い女は、十六、七になるまで女子修道院付属の寄宿学校に「閉じ込められていた」ので、若い男と接する機会はほとんどなかったのです。(中略)ブルジョワ階級以上の若い男にとっては、恋愛対象としては、娼婦、階級が下の娘(お針子など)、人妻しか選択肢がありませんでした。娼婦に恋したのが『椿姫』のアルマンであり、階級が下の娘に恋したのがミュッセの『ミミ・パンソン』のウジェーヌであり、人妻に恋したのが『ゴリオ爺さん』のラスチニャック、『谷間の百合』のフェリックス・ド・ヴァンドネス、『赤と黒』のジュリアン・ソレル、『感情教育』のフレデリック・モローなどだったのです。

 こういう「調べるのが難しい」ことを教えてもらえるのは、ありがたいですね。
 そして当の『青い麦』自体「人妻から性の手ほどきを受けた思春期の若者が、その経験の上に立って自分の本来の恋人と性交する話」なのです。
「思春期の若者」、フィリップ(略称フィル)は16歳。恋人のヴァンカは15歳。
 物語の最初の部分で彼らの関係は、次のように書かれています。

 来年になれば、もしかしたらヴァンカも彼の足もとにくずおれて、女らしいことばをつぶやくかもしれない。〈フィル! いじわるしないで……愛してるわ、フィル、わたしのこと好きなようにしていから……なにか言ってよ、フィル……〉でも今年はまだ子どもの気むずかしいプライドが残っていて、彼にさからってしまう。それがフィリップには気に入らない。

 いかにも思春期の女の子らしい、微妙な心理と言えそうですね。
 でもフィリップはマダム・ダルレイと出会い、童貞ではなくなります。「どの小説でも、肉体の愛に行きつくまでは百ページも、いやそれ以上も費やされているのに、肝心の場面になると十五行で終わってしまう」と本作に書かれているとおり、本作でも「肝心の場面」は詳しく描かれてはいないのですが。

 男性である私が読むと、フィリップの心理は必ずしも正確には描かれていないように感じられます。書き手のコレットが女性なので、男性の心理を正確には知らないのでしょうか。たとえば次のような記述は、作者が若い男性の心理を実際よりも素朴で純粋だと考えてしまっているように感じられます。

 心のなかでとはいえ、はっきり「乳房」と言ってしまって、フィリップは赤くなった。そして女性に対して失礼だと自分を責めた。

 しかし思春期の女の子であるヴァンカの微妙な心理は、なかなか正確に描かれているのではないでしょうか。
 ですので本書は読者が思春期の女の子の微妙な心理を学んだり、あるいはそれに共感したりするためには役に立ちそうな気がします。

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青い麦 (光文社古典新訳文庫)


青い麦 (光文社古典新訳文庫)

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