若い女性の性欲を描く [恋愛小説などから学ぶ]
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』土屋政雄・訳 早川書房
原題は'Never Let Me Go'。
抒情的な青春群像です。
原題は作中に登場する曲の題に由来します。
カズオ・イシグロの作品群における本作の位置づけは、村上春樹にとっての『ノルウェイの森』に相当すると言えるでしょうか。
思春期を迎えた息子に対して母親がセックスのしかたや女性の体のしくみを、実際のセックスの行為を通して教えればいいのではないか――
当塾の「母子性交のご提案」では、そうご提案させていただきました。
かたや『わたしを離さないで』には、次のような場面があります。
性教育では、エミリ先生ご自身がかなりの時間を受け持っていました。ある授業で、生物学教室から等身大の骨格模型を持ち込み、それを使ってセックスとはどうするのかを見せてくれたことがあります。先生が骸骨をあれこれねじ曲げ、棒であちこち指し示すのを、わたしたちはびっくり仰天し、目を丸くして見ていました。先生はなんの気恥しさも見せず、地理の授業とまったく変わらない態度で、セックスの仕組みを淡々と説明していきました。何がどこにどう入り、どんな入れ方があるのか……。一応の説明を終えると、卑猥な姿勢の骨格模型をそのまま机に放り出し、いきなりわたしたちに向き直って、「相手は慎重に選ばなければなりません」と話しはじめました。
さらには、次のようにも書かれています。
たとえばエミリ先生などのお話がありました。自分の体を恥じてはなりません、「肉体の欲求を尊重する」ことが重要です、双方がそれを望むなら性行為は「相手へのとても美しい贈り物」です、等々。
こういう性教育を私もしてもらえたらよかったのにな、という気がしてしまいますね。
カズオ・イシグロは、どうやら男性のようです。
しかし本作では、若い女性の心理が詳しく書かれています。
それらの多くは、とても正確に書かれているように感じられます。
ただし中には、女主人公が女友達と次のように語る場面もありました。
「ねえ、ルース、聞かせて。どうしてもしたくなることってある? 相手が誰でもいいから、みたいな?」
ルースは肩をすくめ、「さあ」と言いました。「わたしはカップルだからね。したければトミーとするから」
「そうよね……わたしだけなのかしら。わたしのあそこ、ちょっと変なのかもしれない。だってね、ときどき、したくてしたくてたまらなくなることがあるの」
「それは変ね」そう言うルースの表情はいかにも気がかりというふうで、わたしはいっそう心配になりました。
「あなたはそんなふうにならないの?」
ルースはまた肩をすくめ、「誰とでもいいから、なんてことはないわね」と言いました。「なんだか不思議な話に思えるけど、でも、少ししたら落ち着くんじゃない?」
「普段はちっともしなくたって平気なの。でも、突然、来るのよ。最初に起こったときは、一瞬のうちだった。相手がしつこく触りはじめてね、もうやめて、と思った。でも、突然に来たの。どうしてかわからないけど、突然、猛烈にしたくなって……」
女主人公が「ときどき、したくてしたくてたまらなくなる」のは彼女の生い立ちのせいではないか――
そんな推測が、後の方の場面で語られます。
はたしてここで語られているような女主人公の心理は、特殊なのものなのでしょうか。それとも、必ずしも珍しくはないものなのでしょうか。男性である私には、それがわかりません。
どうか女性の方にご教示いただけましたら幸いです。
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同じ表紙の画像が二つある場合、後の方は電子書籍です。
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かたや『わたしを離さないで』には、次のような場面があります。
性教育では、エミリ先生ご自身がかなりの時間を受け持っていました。ある授業で、生物学教室から等身大の骨格模型を持ち込み、それを使ってセックスとはどうするのかを見せてくれたことがあります。先生が骸骨をあれこれねじ曲げ、棒であちこち指し示すのを、わたしたちはびっくり仰天し、目を丸くして見ていました。先生はなんの気恥しさも見せず、地理の授業とまったく変わらない態度で、セックスの仕組みを淡々と説明していきました。何がどこにどう入り、どんな入れ方があるのか……。一応の説明を終えると、卑猥な姿勢の骨格模型をそのまま机に放り出し、いきなりわたしたちに向き直って、「相手は慎重に選ばなければなりません」と話しはじめました。
さらには、次のようにも書かれています。
たとえばエミリ先生などのお話がありました。自分の体を恥じてはなりません、「肉体の欲求を尊重する」ことが重要です、双方がそれを望むなら性行為は「相手へのとても美しい贈り物」です、等々。
こういう性教育を私もしてもらえたらよかったのにな、という気がしてしまいますね。
カズオ・イシグロは、どうやら男性のようです。
しかし本作では、若い女性の心理が詳しく書かれています。
それらの多くは、とても正確に書かれているように感じられます。
ただし中には、女主人公が女友達と次のように語る場面もありました。
「ねえ、ルース、聞かせて。どうしてもしたくなることってある? 相手が誰でもいいから、みたいな?」
ルースは肩をすくめ、「さあ」と言いました。「わたしはカップルだからね。したければトミーとするから」
「そうよね……わたしだけなのかしら。わたしのあそこ、ちょっと変なのかもしれない。だってね、ときどき、したくてしたくてたまらなくなることがあるの」
「それは変ね」そう言うルースの表情はいかにも気がかりというふうで、わたしはいっそう心配になりました。
「あなたはそんなふうにならないの?」
ルースはまた肩をすくめ、「誰とでもいいから、なんてことはないわね」と言いました。「なんだか不思議な話に思えるけど、でも、少ししたら落ち着くんじゃない?」
「普段はちっともしなくたって平気なの。でも、突然、来るのよ。最初に起こったときは、一瞬のうちだった。相手がしつこく触りはじめてね、もうやめて、と思った。でも、突然に来たの。どうしてかわからないけど、突然、猛烈にしたくなって……」
女主人公が「ときどき、したくてしたくてたまらなくなる」のは彼女の生い立ちのせいではないか――
そんな推測が、後の方の場面で語られます。
はたしてここで語られているような女主人公の心理は、特殊なのものなのでしょうか。それとも、必ずしも珍しくはないものなのでしょうか。男性である私には、それがわかりません。
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