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9番目の夢.1 [20才と31才の恋話]

(拙作の恋話である『究極の愛を掴んだ31才』は以前、当塾に第22章までが掲載されていました。
 しかし同書をKindle版の電子書籍として出版したのに伴い、第18章から第22章までは当塾での公開を中断させていただいたのです。

 実は第22章で主人公、すなわち31才の当時の私は「一度ぜひ、本気で全力をつぎこんだ作品を書いて」みると宣言します。
 そして31才だった当時の私がその時、まず最初に書いてみたのが「9番目の夢」という中篇だったのです。
 この「9番目の夢」で私は、『究極の愛を掴んだ31才』の冒頭から第22章までに描かれているのと同じ経緯をフィクションとして書きました。

 その「9番目の夢」を、やはり途中まで当塾に掲載させていただきます。
『究極の愛を掴んだ31才』の冒頭と読み比べてみるのも、一興なのではないでしょうか)

 その電話は真夜中にかかってきた。

「センパイ、寝てました?」

 まだ春先の肌さむい部屋のなかに、ひとところだけぽっかりと陽だまりができたかのようなその声を聞いて、昇の眠気は一気にどこかへ吹きとんでしまった。あえて誰かと訊ねるまでもない。この声は夏代だ。そもそも昇のところへ真夜中に電話をかけてくる相手なんて夏代より他には、まずありえないのだし。

 昇は枕もとの目覚まし時計に目をやる。二時を数分ほど過ぎたところだ。
「いいかい、夏代。真夜中の二時といえば、もう勤め人なら普通は寝ているのがあたりまえの時間だぜ」
「ごめんなさい。でも、ちょっと急ぐ用事だったものだから」
「いや何。かまわんよ。どうせ、ついさっき寝いったばかりだったからさ。それで用事ってのは、いったい何だい」

「実はちょっと、お金を貸して欲しいんだけど。すぐに返せると思うから」
「何だ、そんなことか。いいぜ。いくらだ」
「それがちょっと、額が大きいのよ」
「いいから言ってみろってば」
「実は四万なの」

 おいおい。ちょっと待ってくれよ。たったの四万円が、大きな額だとでも思っているのだろうか。あいつの金銭感覚ときたら、あいかわらず昔とちっとも変わっていやしないんだな。そう昇は心のなかで舌をうった。しかしよくよく考えてみると、これは無理もあるまい。何といったって夏代は、まだ二十歳になったばかりの大学生なのだ。大学を出てから今の会社にもう七年間も勤めている昇とでは、金の価値が異なるのもあたりまえというものだろう。

「大きい額というから覚悟して聞いたら何だ、四万ぽっちか。それぐらいなら、いつでもかまわんぞ。で、いつ渡せばいいのかな」
「それがねえ、明日どうしても入り用なのよ」
「そりゃまた、えらく急な話だな。どうする。どこで会おうか」

「センパイは明日もお仕事なんでしょう」
「ああ。でも急ぐんなら休んでもいいし、場合によっては夏代に近くまで来てもらって、俺が会社をちょっと抜け出すっていう手もあるぜ」
「でも、それじゃあ申し訳がないもの。センパイ、朝は何時ごろ家を出るの」
「うん。遅くとも八時すぎに出れば間に合うけど。何せうちから会社まで、歩いて十分もかからないからさ」
「じゃあ私、明日の朝センパイのお宅にお邪魔するわ。八時までには行けると思うんで」
「おう、そうしてくれると助かるや。布団しきっぱなしのまま待っていて、夏代が来たら押し倒すから覚悟していろ」

(下にある本の画像をクリックすると、その本に関するAmazon.co.jpの該当頁が表示されます)

究極の愛を掴んだ31才  1: ドラマテッィクな恋愛実話

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