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愛は地球を救わない.原15-2 [恋愛小話]

 いや、人類は決して滅びない。たとえ現実の人類は滅びようとも、この私にとって世界は決して滅びてしまったりなどしない。この私が新しい人類を産みだし、そして新しい世界を築きあげてみせるのだからだ。
 かなんと愛しあって子供を作り、その子孫を世界中へと満ちあふれさせることによって。

 かなんと私は、新たな世界のアダムとイヴになろう。かなんは新たな人類の母親に、そして私は父親になる。かなんと私の二人が新たな人類にとっての産みの親となり、新しい世界の創造主になるのだ。
 かなんに対する私の愛が全てを新しく創りだし、そして全てを統治する新たな世界の創造神に。

 かなんと私の手によって世界と人類は、その滅亡から救い出されるのだ。したがって私たち二人は新しい世界と人類にとっての救世主、すなわちイエス・キリストの役をも兼ねると言っていいのに違いない。
 その新しい世界と人類にとって私たちの言葉は神の言葉となり、私たちの行いは神の御業となるだろう。
 そして私たちの言葉とは、すなわち「愛」。私たちの行いは、すなわち愛の営みに他ならない。

 新しい世界は愛に満ちあふれ、そして愛が全てを統治する世の中となるべきなのだ。
 そこでは愛が世界を支え、地球と人類とを滅亡から救い出すべきなのだ。
 そんな世界を私たちは築きあげ、それによって地球と人類を滅亡から救い出すべきなのだ。
 神々しいまでに気高くも美しい、この愛という名のもとに。

 かなんに対する私の愛だけに、それをなしとげる力が備わっているのだ。かなんに対する私の愛だけが、それをなしとげうる力を備えもっているのだ。
 かなんの美しさに恋こがれ、それを守りぬくためになら自らの命をさえも投げだして顧みない私の愛だけが。

 かなんは窓際へと歩みより、そしてカーテンを開けはなった。それまで暗闇に閉ざされていた部屋の中へ、いきなり外界の光があふれこんでくる。まだ陽がのぼる前の曙光は、本来ならば穏やかな優しさを備えているはずのものなのだろう。しかし部屋の中の暗がりに慣れきってしまっていた目には、それが鋭いまでにまぶしく感じられてならない。窓際に立って外を眺めているかなんの姿は、さながら日蝕の太陽ででもあるかのように後光を放って見えるほどの神々しさだ。

「先生、ちょっとここへ来て。東の地平線に今、ちょうど朝日が顔を出そうとしているわ。新しい世界の新しい第一日目が今、まさしく始まろうとしているところなのよ」
「おいおい、かなん。そんな窓辺のすぐそばへ、あられもない姿のままで立ったりするんじゃないってば。かなんったらさっきから、まだ素肌にバスタオルを巻きつけただけの格好じゃないか」

「かまわないわよ、そんなこと。こんなに朝早くから起きていて外を覗いている人が、まさか私たちより他にいるはずもないんだし。しかもこの部屋は六階で、まわりには他に高い建物が一つもないんですもの」
「まったく、かなんったら。いったん言いだしたら聞かないあたりは、ちっとも変わる気配がないなあ。まあ私にしてみれば、かなんのそんなところが可愛く思えてしかたがないのも確かだけれど」

 誘われるがままに私は、かなんと二人で窓際に並んで立った。なるほど、かなんの言うとおりだ。この部屋からは東にあたる街並の一角から今、オーロラのような光が明けはじめた空へと向かい立ちのぼっている。まだ街並の姿はひっそりと静まりかえり、そこには人が活動しているらしい気配のかけらも全く見あたらない。おそらくほとんどの人は今なお寝床の中にいて、あかつきの眠りをむさぼっているのだろう。今にも彼らの世界が終わりを告げて、その後へ新しい時代が幕を開けようとしていることにも気づかないままで。だがやがてこの街は眠りから覚め、人々の暮らしの息吹に満たされはじめていくはずだ。

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