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人気者に好かれた私.5 [17才の恋話]

 自分で作った詩を、自己紹介の代わりにするだなんてねえ。
 どうやら隆君の「首尾一貫」の詩は、F組の皆に強い印象を与えたみたい。
 でもって私がかもめさんたちと一緒に、隆君の詩についての話をしていたらさ。
 かもめさんが満智子先生に頼んで、隆君の詩の写しをとらせてもらってきてくれたの。
 だから私とかもめさんとは、その写しを見ながら隆君の詩について、あれこれ詳しくおしゃべりができたわけ。

 なんと私が驚かされてしまったことに、かもめさんったら「この詩って、ちょっとずるいわよねえ」って言うんだな。
 だもんで私が「えっ、なんで?」って訊いたら、かもめさんはこう言ったの。

「だって『自己紹介の文章を書け』って言われて、この詩を提出したわけでしょう。その詩の中で『ひきょうもの呼ばわりされてもひるまない』だとか『理想の為になら/自身をもささげる』だとか、あるいは『どんな事があっても/弱音を吐かず/もし吐いても/又立ち直る』だなんて書かれていたらさ。それらの部分が読まれるのを聞いている人は、てっきり勘違いして感心させられちゃうというものじゃないの。ひるまずに自身をささげて弱音を吐かないのは、この詩を書いた本人なんだろうってね。ところが最後の最後になって、それらは書き手の『俺』とは違う別の人のことなんだって書かれているわけよ。なんだかすっかり騙されちゃった気がして、ちょっと感じが悪いというものでしょうに。うっかり書き手に対して『偉いなあ』と感心させられてしまっていたのが、実は単なる買いかぶりだったってことになるわけだから」

 だから私は、すっかり驚かされてしまったのよ。
「へえ、そんなふうに感じる人もいるんだな」って、私が全く思いもよらずにいたことを改めて気づかされたような気がして。
 でもってかもめさんに、こう言ってみたんだ。
「だけどそれって決して、聞いている人のことを騙そうとしたわけなんかじゃなくてさ。この詩を書いた人の、なんて言うのかな。照れと言うのか、気恥ずかしさみたいなものの表われなんじゃないかって気がするんだけど」って。

 そしたらかもめさんに「それっていったい、どういうこと?」って訊かれたからさ。
 私は一生懸命に言葉を探して、説明したの。

「だって、この詩の書き手の『俺』という人はさ。この詩で描かれているような主人公に対して、『熱い感動の拍手をもって対処する』って言うんでしょう。だからこの詩の書き手の人も、この詩の主人公の人と同じような生き方をしようと考えているはずだと思うの。けれども『理想を貫き通す』だとか『理想の為になら/自身をもささげる』だなんて言ったらさあ。あまりにも格好よすぎで、自慢ぽくって照れちゃうでしょうに。だもんで、その恥ずかしさを避けるためによ。最後の最後で『これは決して自分の話じゃないですよ、私はそういう人のことを応援して拍手するだけですよ』ってことにしちゃったんじゃないのかな。だからそれって、決して聞き手を騙そうとしたりしたわけなんかじゃなくてね。むしろ、この詩を書いた人の奥ゆかしさだとか繊細さを示しているんじゃないかって思うんだけど」って。

 けれど、かもめさんには「それってやっぱり買いかぶりと言うか、単なる『好意的な解釈』ってやつだと思うわよ。たかが高校生くらいの男子に、そんな繊細さだなんて期待する方が無理なんだから」って言われちゃってさ。

 はたして私の考えとかもめさんの意見との、どちらが正しかったのかなあ。
 それって結局、この詩を書いた本人に訊いてみなくちゃわかるはずもないことなのでしょうね。
 けれども当時の私には、そんなこと直に隆君に訊ねてみる勇気はなくて。
 結局そのまま、うやむやになっちゃったわけなんだけど。

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人気者に好かれた私: 実際の恋に役立つロマンス物語

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