愛のための手術.1 [19才と22才の恋話]
これは私が、まだ大学生だった頃の話です。
私は当時、とある女性とおつきあいさせてもらっていました。
二人で一緒に外食をしたり、映画を観に行ったりするデートを重ねていたのです。
彼女のことを、ここでは仮に愛ちゃんという名前で呼ばせていただくことにしましょう。
これは彼女の本名を元に、かなりひねって考え出した仮名なのですが。
ある日、私が愛ちゃんに頼まれて、彼女の買い物に付き添ったことがありました。
彼女の知り合いが結婚するので、お祝いに贈る品を買うのにつきあってほしいと言われたのです。
その知り合いに新婚生活で使ってもらうため「Wベッド用の枕を買って贈ろうと思うの」と愛ちゃんは私に言いました。
そこで二人で何軒か寝具の店を回って、どの枕を買うか見つくろったのです。
「今度、知り合いが結婚するの」だなんて話を聞かされると、どうしても自分の結婚のことを考えてしまいます。
愛ちゃんと二人でWベッド用の枕をいくつも見てまわっていると、ついつい自分と彼女が二人でWベッドに寝ている光景を思い浮かべてしまいます。
「もしかして愛ちゃんは、それを狙っているのかな。私と二人で知り合いの結婚の話をしたりWベッド用の枕を見て回ることで、私が愛ちゃんとの結婚を意識するようにと望んでいるのだろうか」――ついつい私は、そんなふうに勘ぐってしまったりもしました。
なにしろ愛ちゃんは、とても奥ゆかしい気だての女の子です。
もう何度も私とデートを重ねているのに、一度も結婚のことをほのめかしたりしたことはありません。
それどころか私のことを「好きだ」とか「愛している」などと、はっきりと口にしたことも一度もなかったのです。
おそらくとても恥ずかしがり屋で控えめなせいで「こんな自分なんかが、本当に好きになってもらえるはずがない」と思って、腰が引けてしまっていたのでしょう。
私としては愛ちゃんの、そういう謙虚なところが好ましく思えていたのですけれど。
しかも愛ちゃんは奥ゆかしいので、自分の側から私に連絡をしてくることもありません。
いつも私の側から電話して、「次は何日に会おう」などと約束をとりつけるのです。
そして私も当時はまだ、こと恋愛に関しては慣れていなくて不器用で引っ込み思案な性格でした。
だなんて言うと、今の私をご存知の方には「そんなの、とうてい信じられない。かまととぶるんじゃないよ」って叱られてしまうのかもしれません。
しかしこの私にだって、まだ若くて今ほどには面の皮が厚くなく、奥手だった時代があったんですよ。
だから私の側でも愛ちゃんに、キスしたことはおろか手を握ったり肩を抱いたりしたことも、まだ一度たりともありませんでした。
さらには「好きだ」とか「愛している」と、言葉で伝えたこともなかったのです。
そういう気恥ずかしい科白を言ったりしなくても誘えばデートに来てくれるので、ついそれに甘えて手を抜いてしまっていた面があったのかもしれませんね。
でももしかすると愛ちゃんの側では、そんな私の煮えきらない態度を少し淋しく感じていたのでしょうか。
そして私に彼女のことを「好きだ」とか「愛している」と、はっきり言ってほしいと望んでいたのでしょうか。
さらには私に彼女との結婚を考えてほしいと、心の中で願っていたのでしょうか。
そして自分の知り合いが結婚する話をしたりWベッド用の枕を見てまわることで、私が結婚のことを意識するよう仕向けたいと考えたのでしょうか。
結婚祝いの買い物に付き添ったことで私は、そんなふうに考えさせられてしまいました。
だから突きたてられるような思いで、ついに一大決心を固めたのです。
愛ちゃんとの関係を自分が今後どうしたいと思っているのか、はっきりと彼女に伝えようって。
気が小さい臆病者だった当時の私としては、これってとても勇気の要る決断だったんですよ。
だなんて言っても今の私だけしか知らない人には、とうてい信じてもらえないのかもしれませんけど。
(「愛のための手術」より)
下にある本の画像をクリックすると、その本に関するAmazon.co.jpの該当頁が表示されます。
[読者へのお願い]
「人気blogランキング」に参加しています。
上の文章を読んで「面白かった」とか「参考になった」などと評価してくださる方は、下の行をクリックしてくださると幸いです。
「人気blogランキング」に「幸せになれる恋愛ノウハウ塾」への一票を投じる
私は当時、とある女性とおつきあいさせてもらっていました。
二人で一緒に外食をしたり、映画を観に行ったりするデートを重ねていたのです。
彼女のことを、ここでは仮に愛ちゃんという名前で呼ばせていただくことにしましょう。
これは彼女の本名を元に、かなりひねって考え出した仮名なのですが。
ある日、私が愛ちゃんに頼まれて、彼女の買い物に付き添ったことがありました。
彼女の知り合いが結婚するので、お祝いに贈る品を買うのにつきあってほしいと言われたのです。
その知り合いに新婚生活で使ってもらうため「Wベッド用の枕を買って贈ろうと思うの」と愛ちゃんは私に言いました。
そこで二人で何軒か寝具の店を回って、どの枕を買うか見つくろったのです。
「今度、知り合いが結婚するの」だなんて話を聞かされると、どうしても自分の結婚のことを考えてしまいます。
愛ちゃんと二人でWベッド用の枕をいくつも見てまわっていると、ついつい自分と彼女が二人でWベッドに寝ている光景を思い浮かべてしまいます。
「もしかして愛ちゃんは、それを狙っているのかな。私と二人で知り合いの結婚の話をしたりWベッド用の枕を見て回ることで、私が愛ちゃんとの結婚を意識するようにと望んでいるのだろうか」――ついつい私は、そんなふうに勘ぐってしまったりもしました。
なにしろ愛ちゃんは、とても奥ゆかしい気だての女の子です。
もう何度も私とデートを重ねているのに、一度も結婚のことをほのめかしたりしたことはありません。
それどころか私のことを「好きだ」とか「愛している」などと、はっきりと口にしたことも一度もなかったのです。
おそらくとても恥ずかしがり屋で控えめなせいで「こんな自分なんかが、本当に好きになってもらえるはずがない」と思って、腰が引けてしまっていたのでしょう。
私としては愛ちゃんの、そういう謙虚なところが好ましく思えていたのですけれど。
しかも愛ちゃんは奥ゆかしいので、自分の側から私に連絡をしてくることもありません。
いつも私の側から電話して、「次は何日に会おう」などと約束をとりつけるのです。
そして私も当時はまだ、こと恋愛に関しては慣れていなくて不器用で引っ込み思案な性格でした。
だなんて言うと、今の私をご存知の方には「そんなの、とうてい信じられない。かまととぶるんじゃないよ」って叱られてしまうのかもしれません。
しかしこの私にだって、まだ若くて今ほどには面の皮が厚くなく、奥手だった時代があったんですよ。
だから私の側でも愛ちゃんに、キスしたことはおろか手を握ったり肩を抱いたりしたことも、まだ一度たりともありませんでした。
さらには「好きだ」とか「愛している」と、言葉で伝えたこともなかったのです。
そういう気恥ずかしい科白を言ったりしなくても誘えばデートに来てくれるので、ついそれに甘えて手を抜いてしまっていた面があったのかもしれませんね。
でももしかすると愛ちゃんの側では、そんな私の煮えきらない態度を少し淋しく感じていたのでしょうか。
そして私に彼女のことを「好きだ」とか「愛している」と、はっきり言ってほしいと望んでいたのでしょうか。
さらには私に彼女との結婚を考えてほしいと、心の中で願っていたのでしょうか。
そして自分の知り合いが結婚する話をしたりWベッド用の枕を見てまわることで、私が結婚のことを意識するよう仕向けたいと考えたのでしょうか。
結婚祝いの買い物に付き添ったことで私は、そんなふうに考えさせられてしまいました。
だから突きたてられるような思いで、ついに一大決心を固めたのです。
愛ちゃんとの関係を自分が今後どうしたいと思っているのか、はっきりと彼女に伝えようって。
気が小さい臆病者だった当時の私としては、これってとても勇気の要る決断だったんですよ。
だなんて言っても今の私だけしか知らない人には、とうてい信じてもらえないのかもしれませんけど。
(「愛のための手術」より)
下にある本の画像をクリックすると、その本に関するAmazon.co.jpの該当頁が表示されます。
[読者へのお願い]
「人気blogランキング」に参加しています。
上の文章を読んで「面白かった」とか「参考になった」などと評価してくださる方は、下の行をクリックしてくださると幸いです。
「人気blogランキング」に「幸せになれる恋愛ノウハウ塾」への一票を投じる
コメント 0