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10代の性欲の話として読む [恋愛小説などから学ぶ]

ステファニー・メイヤー『トワイライト』上・下 小原亜美・訳 ヴィレッジブックス

 当塾の下記の2頁で、E L ジェイムズ『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』をご紹介しました。
  1. セックスしまくる2週間
  2. ロマンス小説のSM版

 ところで池田真紀子による邦訳で早川書房から出版された『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の「訳者あとがき」には、次のように書かれています。

 この〈フィフティ・シェイズ〉三部作、もともとはステファニー・メイヤー著〈トワイライト〉シリーズのファンフィクション(ファンがオリジナルからキャラクターや舞台接待などを借りて書いた二次創作)“Master of the Universe”として、二〇〇九年から一一年にかけてウェブサイトに投稿され、じわじわと人気を広げていった作品。

 そしてヴィレッジブックスから出版された『トワイライト』の邦訳書のカヴァーの「著者紹介」では「〈トワイライト〉シリーズが、全世界1億部を突破する超ベストセラーとなる」と書かれています。
 そこで当塾でも、この「〈トワイライト〉シリーズ」もご紹介しておくことにしましょう。
 まず、この頁では「〈トワイライト〉シリーズ」の第一作、『トワイライト』をご紹介させていただきます。

「〈トワイライト〉シリーズ」の第一作『トワイライト』の原題は'Twilight'、著者名の原つづりは Stephenie Meyerです。
 本作のヒロインは、17歳のベラ。そして男主人公は、永遠に17歳のままである吸血鬼のエドワードです。
 エドワードはベラと出会った時、彼女の血を飲みたいという強い欲望に襲われます。
 しかしこの欲望を抑えこみ、ベラと恋仲になるのです。

 欧米の吸血鬼伝説には、キリスト教の信仰の裏返しとも言うべき要素が含まれていたりします。
 ですのでキリスト教の教義などを詳しく知らないと、完全には理解するのが難しい吸血鬼小説もあります。
 しかし『トワイライト』にはそのような部分がほとんどなく、純粋に十代の男女の青春物語として読めるようになっています。
 だからこそ「〈トワイライト〉シリーズが、全世界1億部を突破する超ベストセラーとな」ったのでしょう。

 ところで吸血鬼の物語では、「吸血鬼が血を吸う」という行為が、性交の隠喩になっているものが多いようです。
「吸血鬼に血を吸われて、自分も吸血鬼になってしまった」ということが、「性交されて処女や童貞ではなくなり、自分も誰かと性交をする立場になった」ということの隠喩だったりするのです。
 この件に関しては当塾の下記の二つの頁でも詳しく触れていますので、そちらも併せてご参照ください。
  1. 吸血は性交の隠喩
  2. 吸血で乱交を示唆

 これを『トワイライト』にも適用してみたら、面白いかもしれません。
 先述のように吸血鬼のエドワードはヒロインのベラと出会った時、彼女の血を飲みたいという強い欲望に襲われます。
 しかしこの欲望を抑えこみ、ベラと恋仲になるのです。

 10代くらいの男子は自分が魅力を感じる女性と出会った時、その女性の人間性などを評価するよりもまず、「彼女とセックスしたい」という強い欲望に囚われてしまうことがあります。
 しかし中には、そのような強く性欲をひとまずは抑えこみ、その女性と心を通いあわせようとする人もいるのです。

『トワイライト』でエドワードが「ベラの血を飲みたい」と強く感じたのを、「ベラとセックスしたいという性欲の隠喩だ」と考えてみたら――
『トワイライト』は吸血鬼という特殊な登場人物の話ではなく、わりと「どこにでもいる可能性がある」十代の男女の恋話として読むことができるようになります。
 そうすれば、そこから学びとることのできるものは多いのではないでしょうか。

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トワイライト 上 (ヴィレッジブックス)


トワイライト 下 (ヴィレッジブックス)


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