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10年ごしのプロポーズ.名場面集1 [16才と27才の恋話]

「ナツヨは合宿の翌日の夜、単車で帰っていったじゃないか」私は説明することにした。「でも家へ帰る途中で、事故を起こしたそうなんだよ。しかも道ばたに停まっていた車に、自分の側からぶつかっていってね」
「どうして、そんな」
 マミは、いぶかしそうに首を傾げる。
「ナツヨは元々、目が悪いんだ。視力は両目とも、〇・一を下回っていてさ」私は説明を続けた。「なのにあの夜、ナツヨは眼鏡をかけずに単車を運転していたそうでね。しかもあの時は雨が降りだしていて、視界も悪かったしな。だから停まっていた車に気づかず、ぶつかってしまったらしいんだよ」
10年ごしのプロポーズ.2-3より)

「うん、実はさ」ミサトに促されてボクは、最後のためらいを振り捨てるようにして言った。「ミサトにはまだしばらくの間、誰とも結婚しないでいてほしいんだよ」
「えっ、なんで」どうやらミサトは、驚いたらしい。「それはいったい、どういうこと」
「できればなるべく近い将来、ボクがミサトに結婚の申し込みをさせてほしいと思っているからさ。それまでの間、他の人とは結婚してしまわずにいてほしいんだ」
「そんな、そんなこと急に言われても」
「ボクはミサトのことが、好きなんだ」ボクは思わず、心の中をさらけだしてしまう。「ずっと前から、そうだった。愛している、と言ってもいいと思う。そして最近、ボクは思っているんだよ。ようやくボクはミサトにふさわしいくらい、自分を成長させてくることができたんじゃないかって。もしかするとこれって、ただのうぬぼれでしかないのかもしれないけどさ。おまけに、そうなるまでにあまりにも長い年月がかかりすぎたという気もするし」
10年ごしのプロポーズ.13-1より)

「兄だけでなく私も一応、ピアノのお稽古に何度か通いはしたんですよ」ボクの感慨にはかまわず、ナツヨは話を続ける。「でも、すぐにやめさせられてしまいました。『この子は、あまり筋がよくない』って先生に言われちゃったもので。うまくなる見込みもない者にお金をかけるのは無駄だと、うちの親たちは思ったんじゃないのかな。ひどいんですよ、うちの親ったら。それ以来というもの私には、ピアノにさわらせてすらくれなくなっちゃいましてね。『そのピアノはお兄ちゃんのです、汚い手でいたずらするんじゃありません』とか言って。くやしかったですね、やっぱり。だから時おり私の他には家の中に、誰もいなくなることがあるとするでしょう。そういう時には思いきり、ピアノを弾きまくってやったんです。とは言ってもちゃんとした弾き方なんか誰からも教わっていないから、全くの自己流でしかなかったんですが」
10年ごしのプロポーズ.17-2より)

 私はこの日、ひどく腹が立っていた。今日ならこのバイトをやめてもいいと思うほど腹を立てていた。本当に怒っていた。
 そんな時、この電話が来た。
私「はい、郵便局です」
客「馬鹿野郎、てめえ、俺は朝から三度も起きて電話してるんだぞ。さっさと書留送って来いって言ってるんだよ。てめえ、病人を何度も起こして殺す気か。何様だ貴様!!(ダミ声で)」
私「あの、私は今日はまだお客様の電話を受けてませんので。ご用件を詳しくお願いします」
客「とにかく何でもいいんだ、今すぐ持って来い! 病人なんだぞ、こっちは!」
私「ですから、お名前と住所と、どのような書留かを」
客「何度も言わせんな、今すぐ書留持って来い!!」
 私の神経はこの時点でぶっつりと切れた。幸い、まわりに局員は一人もいなかった。
私「(ばかにしきった声で)そーんな、お客様一人じゃないんですから」
 客は狂ったように怒った。
客「なんだとー!! きさま、ちくしょー、日本のだなぁ、この日本で客一人相手にやってる郵便局が、おら、そんな郵便局がどこにあるんだこの野郎!」
私「(鼻で笑いながら)解ってんじゃないですか」
客「きさまー!! 名前言え名前っっっ!!」
私「ナツヨです」
客「よーし、なつよだな。覚えとけよお前」
私「あー、局長にでも誰にでも言っといて下さい。私クビにして欲しくてしょーがないんです。大感謝ってやつですよ(笑いながら)」
客「!!!」
 この時局員が近くに来た。私は電話を局員にかわってもらうことにした。
局員「(受話器から耳を離して)この人、外人さん?」
私「いえ? どうしてですか?」
局員「興奮してて。何を言ってるのか解らないんだけど。日本語しゃべってた?」
私「え、いえ、最初からこんな感じです」
 すごいバイトだなあ。
10年ごしのプロポーズ.23-3より)

「だけどあの日は二次会の最後に、ちょっと感動的な一幕があったんだ。ヒロミがそれまで手に持っていたブーケをミサトに押しつけて、大きな声で言ったのさ。『次はあなたが、早くお嫁に行きなさい』って」
「花嫁のブーケって、それを渡された人が次に結婚できると言われているものね」
「すると次の瞬間、会場にいた皆の間から大きな拍手が湧きおこったんだよ。なにしろ皆、それまでずっと目にしていたわけだからね。ミサトが会の世話役として、とても忙しく動きまわっているのをさ」
10年ごしのプロポーズ.25-3より)

『10年ごしのプロポーズ』Kindle版の電子書籍の出版に伴い、第13~21章は当塾での公開を中断させていただきます。
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10年ごしのプロポーズ  上: ドラマティックな恋愛実話


10年ごしのプロポーズ  下: ドラマティックな恋愛実話

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