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ライオンたちのいる暮し.27 [17才の恋話]

「ちょっと持ち上げると、すぐこれだ。まあいいや。実は合格通知と一緒に入学手続の書類なんかが送られてきたんだけどね。これを見ると入学手続の時に、もう第一外国語と第二外国語を選ばなきゃならないことになっているらしいんだよ」
「あ、それはあれだ。おそらくきっとクラス分けのためだよ。まあうちの大学とキシベの大学とではいろいろ違う点もあるだろうから、いちがいには言えないけど。でもうちの大学では外国語に何を選ぶかでクラス分けが決まることになっている。同じドイツ語ならドイツ語を選んだ奴が一つのクラスに固まっていると、外国語の授業がやりやすいからさ」
「へえ、大学にもクラスなんてものがあるのかい。ボクはてっきり、そんなもの無いものだとばかり思ってた」
「一応あることはあるんだよ。もっとも形ばかりのものでしかないけどね」

「ふうん。でさ、差し迫った問題なんだけど、第一外国語はやっぱり英語にしておこうと思うんだ。ただ第二外国語の方を、いったい何にすればいいのかと思ってね」
「そりゃもう決まってるじゃないか。ドイツ語を選びなさい」
「何で? ドイツ語は英語と似ていてやさしいとか聞いたけど、やっぱりそれでかい」
「いや。キシベがドイツ語を勉強してくれると、オレがわかんないところをキシベに聞けるからさ」
「何だ、そりゃ。身勝手なことを言ってらあ」

「でもそれでキシベがドイツ語わかんなかったら元も子もないな。いやね、実は一年前のことなんだが、まずオレがドイツ語を選んだわけだ。そうしたらレイの奴も、つられてドイツ語を選びやがってさ。聞くところによると、わからないところがあったらオレに教わればいいやって思ってたらしい。するとそれを聞いて唯ちゃんまでドイツ語にしたんだ。こっちはわかんないところがあったらレイに聞けばいいと考えたってわけさ。ところが大本のオレがドイツ語さっぱりなもんだから、親亀こけたら皆こけたってな具合で三人ともドイツ語にはかなり苦しんでいる」

「なんかドイツ語は取らない方がよさそうだな、そう言う話を聞いてると。まあもともとボクは中国語を選ぼうかと思っていたんだけど」
「中国語か。でも中国語は取る奴が少ないからな。授業の時、しょっちゅう教授に当てられるんで大変だってさ。中国語を取ってる奴が、そう言ってたぞ」

その他リュウは問われるままに色々なことを話してやった。大学での授業のやり方や単位について。あるいは大学内の色々な施設や、さらにはサークル活動についてなど。
「どうもありがとう。おかげで大学のことが、おぼろげながら色々とわかってきたような気がするよ。でも何だね、こうやって話を聞いていると本当に早く大学へ行ってみたくてたまらなく思えてくるね」
「ああ。高校なんかと違って大学でなら、自らが本当にやりたい勉強をやるのが妨げられるようなことはないからな。確かに居心地のいいところかもしれないね。オレやキシベみたいに、やりたいことをはっきり自らの内に持っている者にとっては」
キシベもわりと真面目に勉強をする方だ。リュウが読み終えた本を、よく譲り受けて読んだりもしている。

「ところでリュウ、このごろちゃんと勉強してる?」
「頭痛いんだよな、それが。実はここしばらく、すっかりご無沙汰しちゃってるんだよ。ここんとこオレの暮しはレイの奴に引っかきまわされていたようなものだから。何も勉強しないのをレイのせいにするつもりはないけれど。でも、アイツがしょっちゅう訪れて来る限りは落ちついて勉強をしていられないというのも確かだし」
「他人のせいにするなんてのは、やっぱしちょっとリュウらしくないね」
「そうだな。なにはともあれ、本当に勉強しなくっちゃ」
リュウは心の底から、つくづくそう思った。そしてそのためには、まず静かな落ち着いた暮しをしなければ。

「でも、もう大丈夫だろう。レイもようやく落ち着いてきたようだし。これからはまた、この部屋にも静かな日々が訪れるに違いない」
やがて夜がすっかり更けてしまったからと言ってキシベは自分の家へと帰って行く。後にリュウはひとり取り残された。心の中で燃えているのは新たな誓い。
「よおし、明日からはまたしっかり勉強するぞ」
リュウは独り言を声に出して、そうつぶやいて見せる。

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