『賢い女は男を立てる』：幸せになれる恋愛ノウハウ塾：SSブログ

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『賢い女は男を立てる』　[恋愛実用書などで学ぶ] [編集]

ローラ・ドイル『賢い女は男を立てる』中山庸子・訳知的生きかた文庫三笠書房

　ここまで四章はジョン・グレイそして石井希尚と、男性の著者が書いた恋愛実用書のご紹介が続きました。しかしここからしばらくの間は、女性の著者が女性の読者のために書いた恋愛実用書や恋愛ノウハウ本をご紹介していくことにしましょう。

「男性は自分の行動に対して女性から助言されると機嫌が悪くなる」という意味のことを、ピーズ夫妻もジョン・グレイも石井希尚も言っている――一つ前の章で私は、そう書きました。ところがどうやら女性には、自分の恋人や夫に対して、つい「もっと、こうしたらいいのに」などと助言したくなる傾向があるようですね。
　しかし夫と仲よく暮らすためには、そういう時でも助言はせずにおくべきだ――そう唱えているのが、ローラ・ドイルの書いた『賢い女は男を立てる』です。

　この本の原題は「サレンダード・ワイフ」'Surrendered Wife'というもの。日本語に訳せば「夫に勝ちを譲る妻」といった感じでしょうか。
　この題だけを見ると、「古くさい夫唱婦随の考えを唱えている本なのかな」と勘違いしてしまう人もいるのでしょう。しかし本書は決して「妻が自分を犠牲にするように」などと言っているわけではありません。むしろ表向き夫を立てれば、夫の機嫌がよくなって妻に優しくしてくれるから、結果として二人とも仲よく幸せになれると説いているのです。

　そんな「夫婦が仲よく暮らすための秘訣」が書かれていたからこそ、この本は多くの部数が売れたのでしょうね。一九九九年に原著が出版された本書は、「知的生き方文庫」に収められた日本語版の奥付に書かれた著者紹介文によると「アメリカで出版後、世界中で翻訳され、２８０万部を超える大ベストセラーになっている」そうです。
　原題にWifeとあるところからもわかるとおり、著者は夫婦の場合を想定して本書を書いたようです。しかし本書の内容は、決して夫婦だけでなく、つきあいの長い恋人の場合でも参考になる部分が多いんじゃないのかな。

　それでは本書が唱えている内容を、より詳しく見てみることにしましょう。
　著者の書いているところによると、女性は夫など自分以外の人が言ったりやったりすることについて、とかく自分の意見を口に出したがる性質があるようですね。たとえば夫が「今にもひっくり返りそうな椅子にのって」天井の電球を交換しようとしているのを見て、「なんでガレージから踏み台を持ってこないの」というように。そして夫がもしも本当にひっくり返ってしまったら、夫が怪我をしたのではないかと心配するよりも先に「だから言ったでしょう」となじったりしがちです。

　思ったことを率直に言うのは気分がいい、と著者は書いています。「だから言ったでしょう」となじる時には、勝ち誇った気分になれるとも書いています。もしもこれらの科白を言わずに我慢しつづけたら、欲求不満になってしまうかもしれません。

　でもここで、それらの科白を言われた夫の側の気持ちを考えてみてください。自分のことを叱ったりなじったりした妻に対して、夫は愛情が薄らいでしまう結果となります。妻と一緒に「彼は笑ったり、会話をゆっくり楽しんだり、ソファーでいちゃいちゃする気になど」なれなくなってしまうのです。妻が思ったことを率直に口に出すのは、その時こそ気分がいいかもしれませんが、その代償は実に大きなものとなってしまいかねません。

　だからこそ著者は「彼が何をしようと、教えようとしたり、助言したり、間違いを正そうとしてはいけない」と言うのです。

　夫が何かをやる時に、妻が考えたのとは違うやり方を選んだら、つい妻は口出しをしたくなってしまいがちなのでしょう。しかし妻が考えたのとは違うやり方だったとしても、たとえば「電球を交換する」などというそもそもの目的を果たすことができさえすれば、それでいいわけです。たとえ何か問題が生じてしまったとしても、それが大したことではなかったのだとしたら、勝ち誇ったようになじったり目くじらを立てる必要はありません。

　そして夫が何かをしてくれたら、たとえそのやり方が妻の側の考えたそれとは違っていても、ちゃんと感謝の気持ちを示すべきだと著者は言います。そうすれば夫は、その後も妻のために喜んでいろいろなことをしてくれるようになるでしょう。仮に初めのうちはやり方が下手くそだったとしても、そのうち上達する可能性もあるわけです。
（この続きは拙著『幸せに役立つ恋愛本ガイド』でお読みください）

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